革製品の制作に関していろいろな見解がございますので、いろいろと考えておりますが、
ただ、いろんな意見や考え方がございますので、それはそれで良いのですが、
制作する立場として、そのポリシーに関わる部分でもありますので私自身の見解を一度ご説明させていたきますね。
私の制作スタンスは、過去のやり方が全て正しいとは思っておらず、
試行錯誤の中でより良い手法や制作方法があれば随時取り入れております。
縫製方法
手縫いにこだわるのは、手縫いの縫製技術であるサドルステッチが丈夫な縫製方法であること、ミシンの制約を受けずにデザインに自由度があることからです。
縫製は丈夫であることを第一とすると手縫いの縫製が一番だと思っています。
また、デザインを考えると太く大きい縫い穴よりも細かな縫い穴のほうが綺麗に見えること。それに合わせて縫い糸の太さも合わせています。
菱目打ちは、特注の12本目の極細を使っています。この縫い穴の間隔が私が制作している小物には一番合うと思って採用しています。
手縫いだからごつい縫い目が良いと思われる方も多いかと思いますが、手縫いをわからせない縫い目にも主張できる部分もあるかと思っています。
このあたりの感覚は人それぞれなので、異論も多いかと思いますが、当工房の作品をご覧いただければ意図がご理解いただけるかと思います。
糸と蝋引きの関係
縫い糸は、耐久性を考えると麻糸よりもポリエステルのほうが明らかに丈夫だと思っています。
麻糸が最強のように言われる場合もありますが、綿糸や絹糸よりは丈夫だという程度だと思っています。
確かに麻の繊維は太いため切れにくいのですが、擦れるとすぐに毛羽立ってきてしまいます。麻糸は摩擦にはかなり弱い糸だと思います。
よくちゃんと蝋引きすれば耐久性が上がると言われますが、蝋と麻糸が化学反応して強度が上がるわけではなく、縫製時の摩擦削減のためだと思います。
サドルステッチは糸を交錯させて革の縫い穴を通していきますので、糸が交錯するもう一方の糸や革などと縫い穴を通す度に擦れ合います。
例えば100個の縫い穴を通して縫う場合、最後の縫い穴を通る糸の部分は、100回は糸や革と擦れています。
蝋引きされていない麻糸だと糸が毛羽立って直ぐに切れてしまいます。
ミシンと異なり、手縫いの場合はこういったストレスが糸にかかります。そのストレスを軽減するために、糸に蝋を引いて摩擦を減らしているわけです。
蝋が引いてある麻糸だと使用時の摩擦に強いですが、メンテナンスを繰り返すうちに蝋は取れていきますので、長年の使用と蝋引きの関係はないと思います。
制作時の糸の痛みがないと長くもつのは事実だと思いますが、蝋が麻糸と反応して強度があがる根拠は全くありません。
麻糸の場合、きちんと蝋引きされていないと縫製時の摩擦により糸が簡単に痛んでしまいますので、結果的に蝋引きされた麻糸が丈夫だということです。
現在私が小物にポリエルテルの糸を使う理由は、その細かさに対応した細さの麻糸だと弱過ぎて使えないからです。
使用しているポリエルテルの糸の耐久性は革製品では十分すぎるほどで、糸が切れるほど引っ張ると逆に革が切れてしまいます。
私は現在ポリエステルの糸を小物には使っていますが、やはり蝋引きして縫製時の摩擦を削減して制作しています。
こういった蝋引きをしての縫製方法はエルメスやヴィトンのようなメーカーが手縫いで縫製する場合と同じです。
尚、蝋の量を多くし過ぎると出来上がってから蝋が取れていくと糸が細くなったように見えます。いわゆる糸痩せが起こります。
そうすると、糸に隙間ができて糸の緩みの原因になりますので、いっぱい蝋を引けばいいわけでもありません。
糸の太さと強度
手縫いで大きな縫い穴を開ける場合、バランスを考えると太い糸を使うことになります。
しかし、太い糸が丈夫とは限りません。糸は必要以上に太いと擦れによる摩擦を受けやすくなり、擦り切れる原因にもなります。
糸のでっぱりを防ぐために、縫った後から叩いて糸を埋め込む人もいますが、せっかくの縫い目が潰れてしまいますので見た目に影響が出てしまします。
革の小物の場合は糸は必要以上に太い必要はありません。逆に細くて丈夫な糸のほうが耐久性が上がります。擦れにくくなるからです。
ざらざらと擦れている麻糸と、しっかり食い込んででっぱらない絹糸では、絹糸での制作のほうが結果的に耐久性は上だと思います。
それくらい麻糸の場合は糸の摩擦には注意する必要があると思います。
革の強度
革は表面(銀面)の緻密さが強度に影響します。革の繊維は表面が一番緻密で強度があります。(コードバンはどの部分も同じですが)
革の中にいくほど繊維構造が荒くなり強度が極端に落ちてきます。
太い糸を使うために革の銀面に溝を切って糸を埋め込む人もいますが、これは本末転倒で革の強度を落としているだけです。
銀面に溝を切ると革の強度が極端に落ちて、革を厚くして強度を維持することになり無駄な厚みをとることになります。
コバの強度
コバを染めているのが顔料か染料の違いは、コバの強度には全く関係ありません。
顔料と染料の大きな違いは粒子の大きさです。粒子の大きさが染めたコバの強度に影響を与える根拠はありません。
違いがあるとすれば顔料を溶かす溶剤にあるかもしれませんが、その溶剤で染料仕上げのコバをコーティングすれば、結果は同じことです。
今のところ、染料でコバを仕上げる場合は、コバの強度を上げるにはフノリで仕上げるのが一番だと思っています。
フノリ仕上げは不思議で硬く仕上がりながら柔軟性も維持できます。
また、蝋を染み込ませることで水分をはじき、艶を出すようになり、表面もなめらかに仕上がります。
蝋を染み込ませて仕上げることはコバを維持するためには必要だと思っています。
ただ、フノリや蝋を染み込ませるとコバの色が濃くなりますのでコバの色は黒系に限定されます。
このあたりは更なる嗜好錯誤を続けています。
また気がついた事があれば記載していきますが、あくまで私個人の見解ですのでご了承くださいませ。
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革製品の制作についての私見
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Posted by kido on Sep 05, 2010 Comments(2)




